香雲館(伊香保温泉)

伊香保温泉 伊香保温泉でイチオシの温泉宿
香雲館
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 日本古来の純和風の旅館を好むわたしが、老舗の温泉旅館がひしめく伊香保温泉の宿として、この「香雲館」を挙げたことに驚く方もいるかもしれない。この宿の本当の素晴らしさを知るまでのわたしならば、おそらく候補にも挙げなかっただろうし、選んだわたしも、まさかこの宿が・・・と思っている。

 この「香雲館」は、伊香保温泉の宿選びの絶対条件である、貴重な「黄金の湯」をかけ流しで堪能できるのはもちろんのこと、この宿にしかない不思議な魅力が備わっている。正直好みが分かれる宿であり、訪れた方のクチコミなどの中には酷評する方もいるようだが、冒頭でもお話ししたように、わたしも普通なら選ばない方のタイプの人間だった。

 それなのにこの宿を推す理由は、10室しか無い客間のすべてが奇想天外な造りで、和洋折衷のような感覚ながら、実は強烈な「和」であり、要素的にはとことん「和」なのに、どこか新しい現代風な感覚もある不思議な空間を生んでいるからだ。

 おとなし目の造りの部屋は「花」と「鳥」くらいで、あとは到底想像できない造りとしつらえで、「金閣」「銀閣」「松竹梅」「御簾」に至っては、凡人には縁の無い世界が広がっている。「金閣」「銀閣」は明治時代の貴族になった気分となり、「松竹梅」は大名屋敷に招かれたような感じである。「御簾」に至っては、まるで源氏物語の世界に飛び込んだような感覚となり、非現実的な世界も境地に至る。

「漆」の部屋は、中に入るまで全く想像が出来ない色遣いであり、日本の伝統工芸の技を強烈に感じる。「月」と「扇」は、うなるほど上手に月と扇の演出を部屋に施している。

 そして残った「風」の部屋はというと、一番枯れた質素な造りの中に、実に風流な寂の美意識が広がっており、ある面一番「和」を感じる部屋となっている。同じ「和」でありながら「松竹梅」「御簾」とは全く対極に位置する感じだ。

 そんな全く趣の異なる10部屋は、どれも歴史あるものではなく、また匠の技が光るというものでもない。でもそこには日本古来の伝統が脈々と流れており、歴史あるお部屋以上の「和」を感じさせる。

 残念なのは、部屋の露天風呂が温泉ではないことだが、貴重な「黄金の湯」ゆえ致し方ないことでもある。それでも天然温泉大浴場の「あうるの湯」で、あの茶褐色の「黄金の湯」をかけ流しで堪能できるわけで、伊香保でも数少ない本物の伊香保温泉が堪能できる宿であることに変わりは無い。

 月替わりの会席料理も自慢の宿なのだが、それらを打ち消してしまうほど、日本古来の匠の技ではない、日本古来の「和」がキラリと光る客間の造りとしつらえに、ただただうなるばかりなのである。

 都会の喧騒を離れ、湯に浸かり、地元の名物を口にし、部屋で至福のひとときを過ごすということだけでない+αの部分において、この宿の魅力は計り知れないモノがある。そしてこれが何なのかは、この宿を訪れてみないとわからないのである。

 これがこの「香雲館」に対するわたしの印象を、第一印象とは全く異なる、日本の美を愛する者にとってたまらない宿へと変えてしまった・・・