⑭仕丁:沓台「チクタク」

■仕丁:沓台(ニックネーム:チクタク 所属:チームB)

チクタク



曲者揃いのチームBの中で、決して他人に意見することなく、表舞台に立つことを好まず、常に存在を消すかのように生きてきた男が、仕丁沓台を務める「チクタク」だ。

目立ちたくない一心で、「かつうらビッグひな祭り」や「伊東MAGARI雛」への異動願いをひたすら出し続けている男なのだが、私に言わせれば、他へ行ったら必ずや注目の的となり、メインステージへ担ぎ出されると確信している。

顔や性格がどうであれ、なんたってこのサイズなんだから・・・。


そんな彼は、とにかく波風を立てず、うまく一日一日過ごせればそれでいい・・・と、ただひたすら願う人物だ。

だが、時に挙動不審なところがあり、これがとことん不運を招くわけで、同情してしまう。

と言って、つき合いが悪いわけではない。

酒宴には必ず出席し、幹事でもないのに皆に酒をついでまわり、店の主への取り次ぎや空き皿の片付けなども、頼まれずとも行っている。

大蔵卿に肩を組まれ、訳のわからぬ愚痴を聞かされても、真剣に耳を傾け相づちを打っており、純爺に「お前も飲め!」と言われれば、勧められた酒は必ず飲み干す男だ。

冷静さを失う瞬間があるとすれば、それは権力者の前に出た時と、歌会(詩歌を読む詩会ではなく、皆さんの時代でいうカラオケだ!)で何か歌えと言われ前に担ぎ出された時くらいで、日頃は一歩下がってうまく立ち回っているように見える。

大蔵卿のようにゴマすりをしているわけでもなく、根っから悪そうには見えない。

人から特別可愛がられることは決してないのだが、人から嫌われることもない。

だが、とことん運の悪い人間だ。

身を小さくすればするほど、まるで運が居場所を失い、体外へと逃げていってしまっているかのようだ。

こればかりは見ていて同情してしまうのだが、その瞬間自分も運も失っていくような思いに囚われるので、見て見ぬ振りをしてしまう。

とは言え、いじめられっ子というわけでも無い。

それが唯一の救いだろう。

どこの社会にでも必ずいるタイプであり、同窓会で忘れ去られている・・・そんなタイプである。


この男、元々は相良田沼さまに仕えていたのだが、「良きに計らえ!」という言葉に全く対処できなかったことから、使えない男として干されてしまったそうだ。

これが松平さまの白河藩だったならば、きっと重宝されただろうに、こともあろうに数ある藩の中で最もなわなわな、ある意味規制が緩い自由闊達な藩に仕官したがために、こうなってしまったわけだ。

しかも「藩主の田沼さまは、なぜに一度きりしか相良の城にお越しなられぬのか?」と、誰も触れたがらないことを、公然と口にしてしまったのである。

殿様批判ともとれるこの発言に、さすがに御家老衆も黙っておられず、結果彼は今にここにいるという訳だ。

ちなみにこれは純爺情報だが、相良には「ワイロ最中」とやらがこっそり売られており、671個に1つだけ、最中の下に小判が隠されているとか。

なんでも江戸では、食べられない金の最中が代官屋敷によく届けられているとかで、決まってお代官様が「お主も悪よのう~」とねぎらってくれるとか。

これをもじって作られたのが相良の「ワイロ最中」らしいが、こんなものが城下で売られ、まかり通っているのも、いかにも相良藩・・・といった感じなのだ。

こういう隠れた庶民の楽しみに目をつぶり、見て見ぬ振りをする・・・、これで庶民が元気づき、商業が活性化され藩の懐も潤うのであれば、多少のことは良いではないか・・・というのが「良きに計らえ!」ということなのだが、この男にはそのセンスが全く無いのだ。


そんなこの男の唯一の趣味が時計だ!

とにかく無類の時計好きだ!

もうお分かりだと思うが、あだ名の由来もここにある。

なんでも昔、病床の祖母を見舞いに、土佐国の安芸を訪れた時に目にした「野良時計」が忘れられなくなったそうで、今でも暇があればあちこちに時計を見に行っているらしい。

もちろん東照宮にある「家康公の洋時計」も見に行ったと言っていた。

だが先日「東萩間の石時計」を見に行った折には、ぐるぐると何時間も時計の周りをうろついていたもので、盗もうとしているのではと怪しまれ、番所に連れて行かれたらしい。

あんなに大きく重い石時計を、たった1人で盗めるはずが無いのに、そう思われてしまうところがこの男のツキの無さだ。

また島田の「からくり時計塔」の前では、時を告げに飛び出てきた大奴にビビり、腰を抜かしたらしい。

半時に一度しか出てこないタイミングで、正面に立っているとは、逆にもの凄いツキの持ち主と思えるほどの運の悪さだ。

またいつだったか、松崎町の「時計塔」の文字盤には1~13の文字が刻まれているとか、函南にはリスが太鼓を打ち鳴らし時を告げる時計があるなどと、訳のわからぬことを興奮しながら話していた。

時計の文字盤に「13」があるわけないし、「リス」が正確な時を告げられる訳が無い!

おまけに時計の話をしているのに、「ブナおじさん、ブナおじさんが・・・」と、これまた見知らぬ人物の名を連呼していて、もはや理解不能で完全にイっちゃっているようだった。

あまりに挙動不審なので、最近は少し心配だ。

放火など起こさねばよいが・・・。

いかんいかん、この男に同情すると、自分の運も逃げていく・・・。

チクタク2

■参照:「岡部宿のひなまつり