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伊豆の長八美術館 Vol.10 伊豆の長八美術館(松崎町)
「博物館・美術館」部門
- Matsuzaki -
伊豆の長八美術館 松崎
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『伊豆の長八美術館』をご覧になるにあたって
必ず登場する、その名とは?

伊豆の松崎を訪れると、町のあちこちでその名が登場する、ひとりの人物がいます。

伊豆の長八美術館 外観松崎の町並みのシンボルでもある「なまこ壁」の話をしていても、観光名所の「岩科学校」や「明治商家 中瀬邸」などを訪れても、そして旧家の蔵に案内され骨董品などを見せて頂いている時にも、必ずと言っていいほどその名が登場するのが、松崎が生んだ「漆喰」(しっくい)芸術・「鏝絵」(こてえ)の名工、「伊豆の長八」(いずのちょうはち)こと「入江長八」です。

わたしは、この入江長八に出会うまで、鏝絵という芸術分野が存在することすら知りませんでした。

名のある商人の旧家や、地元の名家などにある土蔵の入口や、玄関上、板戸などに、鏝絵を見かけてはいましたが、それが鏝絵というものであり、ひとつの芸術分野として存在し、多くの職人・名工がいたという認識がありませんでした。

建築としての単なる左官技術とは異なり、そこに芸術的な要素が加わるこの鏝絵の世界で、さらにそこに絵画的手法色彩を織り交ぜ、前にも後にも例のない、全く独自の世界を築き上げたのが、この入江長八でした。

現在も、この松崎の町のみならず、あちこちに点在する建築物に、この入江長八の作品が生き続けていますが、そんな入江長八のすばらしい作品の中で、絵画的な室内装飾要素の強い作品を中心に、数十点集め、多くの人々に観賞して頂くとともに、後世に伝えるべく造られたのが、この『伊豆の長八美術館』です。



長八に負けず劣らず、すばらしい建築物!

この「伊豆の長八美術館」を訪れてみて、まず最初に驚かされるのが、この「伊豆の長八美術館」の建物そのものです。

伊豆の長八美術館 正面社団法人 日本左官業組合連合会」の全面協力のもと、全国から腕に自身のある左官職人が集められ、愛知県にあるインパクト絶大で衝撃的な作品である「幻庵」や、気仙沼の「リアス・アーク美術館」などの建築で知られる、「石山修武」(いしやまおさむ)氏が指揮を執り、この「伊豆の長八美術館」は造られました。

この松崎の町には、「ときわ大橋」や「時計塔」など、石山氏による建築物がいくつかあるのですが、石山氏と言えば、鉄やガラスを使った、前衛的な作品を数多く手がけてきた、建築会にあっては異色的な存在であり、そのアバンギャルドな感覚と、一見対極的なイメージにもある、日本伝統の漆喰・左官職人の技が、見事に融合したのが、この「伊豆の長八美術館」の建物で、長八の築き上げた新しい世界に通ずる見事な建築物となっています。

多少なりとも建築をかじった経験のあるわたしには、長八作品もさることながら、この「伊豆の長八美術館」の建物は実に魅力的で、かなり惹かれるところがありました。

伊豆の長八美術館 入口そんな現代建築と、江戸時代の漆喰技術を融合させ、時代を超えた建築物となっているこの「伊豆の長八美術館」は、1985年に、和風モダンの巨匠として、「歌舞伎座」・「成田山新勝寺」・「中宮寺本堂」などを手がけた、故「吉田五十人」(よしだいそや)氏にちなんで創設された「吉田五十人賞」を、見事受賞しました。

残念ながらこの吉田五十人賞は、1993年をもってなくなってしまいましたが、18年にわたる表彰作品の中には、今や日本を代表する建築家である「安藤忠雄」氏の城戸崎邸や、個人的に大好きな、山形県の酒田にある、「土門拳記念館 」 などがあります。

いずれにしても、入館する前から見ごたえのある美術館となっているのが、この「伊豆の長八美術館」ですので、すんなり入口に向かうのではなく、この斬新なデザインと、職人技が光る漆喰技術を見逃さずに、ご覧になってみてください。



これまたすばらしい建物が横に・・・

そんなすばらしい建物である「伊豆の長八美術館」ですが、ちょっと目を横に向けると、そこには、この「伊豆の長八美術館」に勝るとも劣らぬ建築物があります。

カサ・エストレリータと伊豆の長八美術館この隣接する、斬新でこれまたすばらしい近未来的建築物は、「カサ・エストレリータ」といい、同じく石山修武氏による建築物となっています。

現在、地中海風レストランとお土産品売り場として利用されている「カサ・エストレリータ」ですが、この建築物は、宇宙に向けて広大なスケールにて設計された建物で、煌くミラーガラスが、星のキラメキを表現しており、ブルーのタイルが眩いインターナショナル感覚溢れる斬新な設計の建築物となっています。

噴水のある広場に立って建物を眺めていると、なんとも言えぬ一種独特の雰囲気を感じ、ここが西伊豆の小さな町であることを忘れさせてくれます。

ナシミエントの塔さらにはその一角に、これまた「ナシミエントの塔」といい、ガウディ建築の代表作として知られ、現在も未だ造られ続けている、あの「サクラダファミリア」で、日本人ながら主任彫刻家として今も掘り続けている、「外尾悦郎」氏が手がけた作品があります。

1986年に、4ヶ月間一時帰国して造り上げたというこの塔も、これまたすごい彫刻となっています。

ナシミエントとは、スペイン語で「生誕」を意味するもので、タブノキの生命力を表現したというこの塔は、「花とロマンのふる里づくり」をスローガンに発展し続ける松崎の町の姿を表現しています。

この「カサ・エストレリータ」と「ナシミエントの塔」も、見どころ充分のすばらしい建築物となっていますので、「伊豆の長八美術館」をご覧になった後に、ゆっくりとご覧になってみてください。



74年の人生・・

そんな「伊豆の長八美術館」は、先にお話したように、入江長八という、天性稀な腕の持ち主だった長八の作品を集めた美術館となっています。

入江長八は、1815年8月5日、貧しい農家であった、父「兵助」、母「てご」 の長男として、この松崎の「明地」(みょうち)に生まれました。

入江長八小さい頃から手先が器用だった長八は、「浄感寺」(じょうかんじ)塾で学ぶ一方で、自らの腕で身を立てるべく大きな夢を育んでいきました。

その後、12歳で松崎の左官棟梁であった、「関仁助」(せきにすけ)に弟子入りし、漆喰技術を身に付けると、19歳で江戸へ出て、左官頭「波江野亀次郎」のところに身をおくとともに、「谷文晁」(たにぶんちょう)の門人で、日本絵画の王道であった狩野派の絵師である、「喜多武清」(きたぶせい)に弟子入りし、絵画の修行を積むとともに、今まで培ってきた漆喰・左官技術との融合を試みるようになっていきました。

やがて、色のノリなどに、長八ならではの独自性を生み出しつつ、全く新しい鏝絵を確立し、多くの作品を世に送り出していきました。

長八の名が、広く世間に知られることとなったのは、26歳の時に描いた、日本橋茅場町の「薬師堂」の左右の御拝柱に踊った、一対の「」からでした。

この作品をキッカケに、名工としての長八の名は知れわたり、その後、「浅草観音堂」、「目黒祐天寺」、「成田山新勝寺」、「高輪泉岳寺」などに、数々の長八作品が生まれていきました。

現在、その多くは、関東大震災などの影響もあり、焼失してしまいましたが、郷里松崎の岩科学校や浄感寺など、今も長八作品を見ることができる場所がいくつかあります。

特に、現在「長八記念館」となっている、長八の菩提寺でもある浄感寺の欄間に描かれた「飛天」は、長八の代表作と言われ、幼少の頃お世話になったお寺への恩返しの気持ちから、一年の歳月をかけ描かれた、実にすばらしい作品となっています。

数々の名作を世に残した入江長八は、1889年10月8日、東京深川の自宅で、「わが秋や 月一夜も 見のこさず」の句とともに、74年の生涯を閉じました。

現在、長八の亡骸は、長八ゆかりの浄感寺と、浅草の「正定寺」に眠っています。



比べられない長八作品!

伊豆の長八美術館 内部展示長八作品のすばらしさは、他に比べるものがないことでわかります。

後にも先にも、同じ技法を駆使し、これだけの芸術的な作品を残した人物はおらず、鏝絵の世界でも、そのひと味もふた味も違った色彩豊かな表現は、際立った存在となっています。

そんな長八作品が集まった「伊豆の長八美術館」を訪れると、まず受付で、館内のご案内とともに「ルーペ」を渡されます。
伊豆の長八美術館 内部展示 
一瞬、ん?と思うのですが、実際に長八の作品を前にすると、このルーペを渡された意味がわかってきます。

鏝絵と聞いて、一般的な左官で使用する鏝のイメージから、どうしても大胆で大雑把なイメージを持ってしまうのですが、実に緻密で繊細に描かれたその長八の作品は、遠目で見てもルーペで眺めてみても、驚くばかりです。

長八作品そして、何よりも普通の絵画鑑賞と全く異なるのが、漆喰による凹凸のある立体作品であるということで、眺める角度や光の当たり具合により、その作品がより造形美あふれるものへと変化していきます。

受付で渡されたルーペとともに、一瞬驚かされたことに、これだけの美術作品の数々が展示されているにも関わらず、写真撮影がOK!ということでした。

しかしながら、これらの長八作品を鑑賞していくと、なるほど、この長八作品は、どんなにすばらしい写真家が撮影しても、決して平面では伝わらないすばらしさがある・・・、ということに、納得する次第でした。



納まるべきところに納まってこそ、長八作品!
 
そんな長八作品ですが、この「伊豆の長八美術館」を訪れ、唯一残念だったのが、その作品そのもののすばらしさは感じられるものの、岩科学校などで長八作品を見て感じた「驚き」や「輝き」が感じられないことでした。

わたしはそのことが、気になりながら、この「伊豆の長八美術館」を後にしましたが、思うに、この「伊豆の長八美術館」の建物が、外観のみならず内部も建築物としてしてすばらしすぎて、そちらに目を奪われていたということもありますが、やはり長八作品は、絵画とは異なり、「本来納まるべきところに納まってこそ、生きてくるのでは・・・」ということでした。

伊豆の長八美術館 内部展示絵画色が強いとはいえ、やはりその場所特有のものとしてつくられた作品が多いのも事実で、長八の鏝絵は、古い旧家やお寺の壁や欄間にあってこそ、本来の輝きがあるのでは・・・ということでした。

それだけに、この「伊豆の長八美術館」の、一箇所で長八作品が多数見られるというすばらしさと、個々の長八作品が、納まるべきところで放つ輝きは、相反するものであり、それを望むことは、無いものねだりになってしまいますが、正直、そこにやや物足りなさを感じたように思えました。

それだけ、他の長八作品がすばらしく感じるということでもあり、そういう意味では、この「伊豆の長八美術館」は、最初に訪れた方が良い場所と言えるかもしれません。

いずれにせよ、伊豆の長八をご存知でない方も、鏝絵というものが全くイメージできない方も、ここに書いたような文章では、決して長八作品のすばらしさは伝えきれませんので、是非一度、伊豆の松崎にある、「伊豆の長八美術館」を訪れてみてください。

長八作品を眺めてみれば、きっと鏝絵の世界が理解できるはずですよ!
- 伊豆の長八美術館 -
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伊豆の長八美術館 情報
■所在地 松崎町松崎23
■問合せ 0558-42-2540
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