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Vol . 1341

日向の七草祭

Shizuoka

静岡

2つ星評価

日向の七草祭

Presented By 星★聖

日向の七草祭(静岡)

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日向の七草祭ひなたのななくさまつりとは?

静岡県静岡市葵区の藁科川上流の日向地区の農村で古くから伝承されてきた、その年の豊作を願う予祝芸能で、福田寺観音堂にて、旧暦の1月7日に執り行われることから「日向の七草祭」と言われる。

江戸時代初期の1644年に記された寛永年間の詞章本も残る伝統あるお祭りで、1980年11月28日に静岡県の無形民俗文化財に指定されている。

七草祭は、広義には旧暦1月5日の『シオバナ汲み』に始まり、本祭翌日の『オリビラキ』で終わるとされるが、一般的にはて旧暦の1月7日の夜祭りを指し、その中でも独特の詞章を唱えながら養蚕の繁栄を願う『駒んず』と、難読難解な田遊びの詞章とともに、和太鼓の面を田んぼに見たて米を撒き豊作を願う『数え文』が特徴的となっている。

また『浜行』『若魚』と呼ばれるひょっとこ面の道化が登場し場を和ます他、『歳徳祝』『大拍子』『申田楽』などの演目が催される。

星★聖の名勝・史跡探訪記

日向の七草祭の見どころ

ジブリ映画のようなダラダラ坂

福田寺観音堂へのジブリ道

藁科川沿いを走る県道60号より集落の方へと一本道を入ると、程なくして「堂下」のバス停が見えてくる。こんな通りをバスが走るんだ…などと思いながら足を進めると、ちょうどバス停横からまるでジブリ映画のオープニングの様な雰囲気のダラダラ坂が続いている。

何とも言えない雰囲気に誘われるように、薄明かりを頼りに上っていくと、程なくして福田寺観音堂にたどり着いた。

のぼりが立ち暗闇に赤々と照明がついているので、まず迷うことは無いと思うが、途中に漆黒となる場所もあるので、祭りの明るさに慣れた帰り道には足元に注意したい。

ちなみにバス停からは近いが、バスでのアクセスは本数が限られるうえ、夜祭りの頃には最終便が無くなるので、現実的にはバスでのアクセスは難しいと考えた方がよさそうだ。


福田寺観音堂ふくでんじかんのんどう

福田寺観音堂

千手観音菩薩を御本尊とする朝旭山福田寺の観音堂にて、日向の七草祭は行われる。境内には仮設の舞台が設けられ、真っ赤な奉納提灯が並んでおり、否応なしに祭り気分が盛り上がる。

日向の七草祭が、旧暦1月7日に行われることは前述した通りだが、本祭に先立って2日前の旧暦1月5日に、安倍川河口の駿河湾に面した海岸まで出向き、海水と小石を採取して持ち帰るという『シオバナ汲み』が行われる。

海水により穢れを祓う意味合いのもので、翌日町内へと配られるのだが、今でこそ車で1時間程で海岸にたどり着くが、昔の人はこれを歩いて行ったというのだから大変なことだっただろう。海水と小石と言えども意外に重いわけで、しかも集落の数も今よりも多かったと考えられ、先人たちの神聖なる祭りにかける想いがここからも伝わってくる。

また祭り前日となる旧暦1月6日には、近くの陽明寺にて七草祭の練習や段取りを確認する『大日待』が行われる。祭りそのものが平日となることが多いことや、皆が皆農家というわけではなくなった時代において、伝統を守っていくことの大変さがここにもある。

そして迎えた祭り当日は、午前10時より『日の出の祈祷』として、陽明寺にて大般若経の読経が行われ、午後1時からは小向の吊橋下で、舞役の方たちの禊となる『水垢離(みずごり)』が行われる。この真冬の時期に、7回川に入り身を清めるというのだから、こちらも伝統行事とは言え大変なことだ。


恵方に向かって!『歳徳祝としとくいわい

日向の七草祭の歳徳祝

午後6時半、打ち上げ花火を合図に始まる夜祭りは、禊を終えた6人の舞役たちが、その年の福徳を司る歳徳神へ拝礼する『歳徳祝(としとくいわい)』から始まる。歳徳神というと馴染みが薄いかもしれないが、年神様と言えばピンとくる方も多いだろう。

拝礼は、輪の中心に真っ直ぐに立てられた竹を持ち、それを中心にくるくると回りながら歳徳神がいるその年の恵方に向かって、代わる代わる3回頭を下げる。

淡々と同じ所作が18回繰り返されていくわけだが、今や国民的行事となりつつある恵方巻でもお分かりのように、毎年吉方は変わって行くわけで、この歳徳神への拝礼も、毎年方位を変え行われる。

年ごとの写真や映像を見ると、その違いが分かるだろう。


大拍子だいびょうし』と『申田楽さるでんがく(猿田楽)』

日向の七草祭の大拍子・申田楽

歳徳祝が終わると拝礼を済ませた舞役が、今度は野村萬斎の狂言で観るような袖口を掴む姿で踊りだす。左足だけを同じように3回浮かせる所作が特徴的で、裃姿の6人の舞役が、輪になって内を向いたり外に開いたりしながら、少しづつ回転しながら踊る。

この『大拍子(だいびょうし)』とそれに続く『申田楽(さるでんがく)』は、この所作の踊りを繰り返し行っているのだが、同じ動きながら申田楽の方がテンポが速く軽快な感じだ。パッと見でこの違いが分かる人は、かなりの七草祭ツウと言えるだろう。


子供たちがかわいい!『駒んず』

日向の七草祭の駒んず(こまんず)

申田楽の後は、静岡の田遊び系の伝統民俗芸能では珍しい、養蚕の繁栄を願う『駒んず(こまんず)』が行われる。『こまんずばやし』と呼ぶ方の方が多いのかもしれないが、舞役を含め10名程が笹竹を持ち輪となり、笹竹を輪の中心に向かって押したり引いたり揺すりながら詞章を唱和する。

独特の抑揚のある言い回しと、何とも言えない笹の擦れ合う音が空から降ってくるような感じの中、頭に馬の被り物をのせた地元の子供たちが、その輪の中心に入りくるくると回り、馬が出た後には、今度は山鳥の被り物をのせた子が、同じように輪の中に入り回りだす。

もともとは馬も山鳥も青年が行っていたのだが、過疎化による後継者不足などもあり、現在は子供たちが登場するようになった。今では元気に演じ切るこの子供たちの動きがかわいくて、祭りの見所の一つにもなっている。

ちなみに馬や山鳥が登場するのは、馬の皮と融合した少女が蚕に変身してこの世に絹をもたらした…とされる蚕馬伝説や、養蚕の工程の1つである、孵化したばかりの毛蚕(けご)を集め新しい蚕座に移し広げる掃き立ての際に、山鳥の尾羽を使用したことによるという。

昔はより身近なもので当たり前に理解できたことも、現代人の生活ではピンとこないモノばかりで、だからこそそこに伝統民俗芸能を知る楽しさがあるのかもしれない。


祭りを盛り上げる『浜行はまゆき

日向の七草祭の浜行(はまゆき)

日向の七草祭で、地元の方もカメラマンも皆が楽しみにしているのが、道化の登場だ。

を背負い、さらには大きな鯛まで背負って現れるのが『浜行(はまゆき)』で、浜行が登場すると祭りのムードが一気に盛り上がる。

ほっかぶりにひょっとこ面をつけ、手には魔法使いか仙人か!?という、螺旋状の大きな杖をついていて、ユニークな仕草で境内を練り歩く。

子供たちは大喜びで、近づいてはキャーキャー声を上げているが、もちろんここへ遊びに来たわけではない。恵みものの海の幸・山の幸を、御本尊である千手観音菩薩に奉納するために現れたわけだ。

奉納前には、舞台上で鯛を掲げながら、お囃子にのって独特の舞も見せる。


人気者の道化『若魚わかいお

日向の七草祭の若魚(わかいお)

その後登場するのが、もう一人の人気者である道化の『若魚(わかいお)』なのだが、登場した際にはひょっとこ面で違いが分からず、同じ道化と思ってしまった。

だがすぐに俵を担ぐ浜行に対して、こちらは籠のついた天秤棒を担いでおり、そこにはこぼれんばかりの海の幸が盛られている。実際に練り歩く際に、こぼれ落ちた鯛を係の方が戻したりもしていた。

そしてこちらも浜行同様に螺旋状の大きな杖をついているのだが、どうだろう形からすると魔法の力は浜行の方が強そうな感じだ。ただ定かではないが、どうも固定されているわけではなく、年により入れ替わっているようにも思える。

それはさておき、こちらもユーモラスな動きを見せながら、同じく御本尊に美味しい自然の恵みを奉納するとともに、人々にも恵みを分け与える。


えっ!練習だったんですか?

本祭前の休憩

唐突に「実は今まで行われてきたものは、すべて本祭のためのリハーサルの様なもので、休憩後からがいよいよ本祭なんだよ!」と、休憩中に隣にいた地元の方からそう聞かされた。

思わず「えっ!練習だったんですか?」と耳を疑った。

その後の説明を伺うと、どうもそれも含めてこれが正式な祭りの段取りであり演目であるということで、本当にリハを行っていたというわけではないようだ。

その言葉通りに、休憩後に再び歳徳祝~駒んずが行われたわけだが、違いは本祭にあたり観音堂の御本尊前より、翁面万延の詞章本が舞台へ登場したことだった。

そして気づけば、先程登場した浜行シオバナ撒きのお清めをしている。祭りに先立って2日前に汲んできたあの海水である。本祭前に舞台を清めていたわけである。

ちなみに、浜行により撒かれる海水を浴びると、身が清められ一年間無病息災でいられるということで、実にありがたいことだが、子供たちは別の意味で大はしゃぎだ。

そしてもう一つ決定的に違うのが、稲作には欠かせない鍬(くわ)も鋤(すき)も登場しない七草祭が、ナゼに田遊び系の伝統民俗芸能と言われるのか?という、その答えとなる田遊び読本の献読がこの後行われるからだ。


難読難解な『数え文』

日向の七草祭の数え文(かぞえもん)

江戸時代の1860年頃の万延年間の詞章本の数え文を独特の節回しで献読するので『数え文(かぞえもん)』と言われる。

最古の1644年の寛永本ではないが、その内容はというと、全く読めないし聞いてもわからないのだが、神歌・稲草・福の種・鳥追・田植・穂孕み(ほばらみ)・穫り入れなど、農作業や稲作に関するものだという。

そして舞台上では、この田遊びの詞章に合わせて、田んぼに見立てた和太鼓の面の上に、福の種となる米が撒かれ、幣束による鳥追いなどの所作が行われる。

先ほども書いたが、一般的な田遊び系の伝統民俗芸能は、「蛭ヶ谷の田遊び」のように鍬などの農具が登場し、誰の目にも稲作の作業次第と見て取れるものや、「藤守の田遊び」のように田を清め豊作を願う盛大な舞や儀式を行うものが多いのだが、この叩くわけでもない和太鼓を前に座り、失礼ながら地味で何気ない舞役の所作を見ただけですぐにこれが稲作の作業次第で、その年の豊作を祈願する予祝行事だと分かる人は少ないと思う。

また「日向の七草祭」と、祭りの呼称に田遊びの文字が入らないことも、イメージがわかない理由の1つかもしれないが、だからこそ珍しく希少性の高いお祭りだということがわかる。

なかなか派手さの無いお祭りだけに、若い人たちに理解してもらうのは難しいのだろうが、年配の方や訪日外国人などには興味深いお祭りに思える。ありきたりの祭りに飽きた方は、是非一度足を運んでみて欲しい。

この数え文の後には、再び申田楽が演じられ、翁面と詞章本が観音堂へと戻されると、御本尊への礼拝を持って本祭は終了となる。

伝統民俗芸能は、一大フィナーレ…というものはほとんどなく、静かに終えていくものが多いが、一際スッと終わっていく感じがするのが日向の七草祭だ。そして舞台に集中していた意識が薄れていくと、次第に出店で賑わう人たちの声が大きくなってくる。こちらはこちらで、またお祭りのようだ。

翌日、夜祭りの後片付けを行った後、関係者による打ち上げとなる『オリビラキ』を終えると、日向の七草祭はすべて終了となる。


伝統を受け継ぐ難しさ…

難読難解な詞章文

見ても読めない万延本の数え文はもちろんのこと、前述の駒んずの詞章も、とにかく抑揚と言い回しが難しく、譜面に起こせるシンプルな五音音階とは異なり、口承でしか習得できない感じだ。

農作業や日常生活の中で、小さい頃からこの調子を耳にして育っていれば、それ程大変なことではないのかもしれないが、今の時代、しかも大人になってから初めて耳にする微妙な旋律を覚えるのは、お経と一緒で大変なことだ。

朝倉さやちゃんが、以前難しすぎて口承されぬまま地元で謡える人がいなくなってしまった有東木に伝わる茶摘み唄を、残されたおばあちゃんの映像を頼りに復活させるというものがあったが、その際に話していたのが、譜面に起こすのが難しい微妙な調子で、民謡日本一のさやちゃんでもかなり苦労したという。

今ではアルバムに収録され劇的に生まれ変わっていて、素晴らしい曲となっているのだが、こうした例は非常に珍しく、各地の伝統民俗芸能を観に行くと、演じられなくなった舞や謡われなくなった演目が年々増え、昔に比べ歯抜けとなっている祭りが増えており、映像を通してしか見られず耳にできなくなった旋律も多い。

そんなことを考えながら祭り見物を行っていると、夜祭りを通して常に裏方として祭りを支える一人の青年に目がいった。自分よりもずっと若いのに、この伝統民俗芸能を守って行こうという姿勢が、祭りを通じて随所に感じられた。

表舞台には一度も登場することなく、祭りの進行や連絡係を一手に引き受けている感じで、その間にも祭りを盛り上げようと声をかけたり詞章を一緒に唱えたり、始めから終わりまですべてをこの七草祭に捧げているようであった。

とにかく見ていて頭の下がる思いだったのだが、こうして日向の七草祭について綴っていて、最後に書きたくなったのが彼のことだったということからも、自分でも驚いているのだが、どれだけ印象的だったのか、皆さんにもお分かり頂けたのではないか。

彼のような存在があるからこそ、江戸時代から400年近く続く伝統が受け継がれていけるわけで、また彼のような人物がいる日向の七草祭は、これからも時を刻み続けることだろう…と、彼の姿を目で追いつつ確信した。

星★聖の日向の七草祭の3つのポイント!

駒んずのかわいい子供の動きと詞章に注目!

心地良い笹の音と独特な謡いまわし、そして一生懸命演じる子供たちの表情に注目!

和太鼓上の細かい所作を見逃すな!

難読難解な万延本の詞章文が唱えられ中で行われる、舞役たちの細かい所作に注目しよう!

浜行と若魚のユーモラスな動きを楽しもう!

夜祭り中盤に登場する、道化のユニークな練りと舞を楽しみ、恵みを授かろう!

日向の七草祭の見どころ

温泉マイスター 星★聖(ほしたかし) 星★聖(ほし たかし)

日向の七草祭のおすすめ時期

1月旧暦1/7 2月旧暦1/7 3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月 

日向の七草祭の基本情報

名称 日向の七草祭
読み方 ひなたのななくさまつり
開催時期 旧暦 1月7日
郵便番号 〒421-1403
所在地 静岡市 葵区日向(福田寺観音堂)
駐車場 なし
お問合せ 054-251-5880(するが企画観光局)
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アクセス JR東海道線「静岡駅」
⇒静鉄バス「堂下」下車 徒歩3分 ※運行注意

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